ディベート

8.3.2上級7分で読了

ディベートはコラボレーションにおける極めて重要な側面です。最善の解決策は往々にしてディベートを通じて導き出されるからです。ディベートとは、相反する立場をとる人々が、事実に基づいた論理的な主張を用いて自らの正しさを証明するプロセスです。

学術的あるいは政治的なディベートには、通常、発言の順序、発言時間、論じることのできるテーマなど、参加者が従うべき厳格なルールが存在します。公式なディベートにはルールを遵守させる司会進行役(モデレーター)が置かれるのが一般的であり、その目的は議論を議題に集中させ、収拾がつかなくなるのを防ぐことにあります。

プロフェッショナルな職場において、ディベートは自由形式で各自の自律性に委ねられることが少なくありません。これにより有機的かつ自然発生的に議論が行われる一方で、モデレーターのいないディベートが「争い」へと退行してしまう事態も招きかねません。ここでの争いとは、手段を選ばずただ勝つことだけを目的にした状態にほかなりません。ひとたびディベートをやめて争いへと突入すると、人は自らの正しさを証明できない場合、正しそうに見せかけるために論点ずらし、欺瞞、不誠実な戦術を用いがちになります。こうした論争戦術の総称を「論理的誤謬(ロジカル・ファラシー)」と呼びます。

論理的誤謬には多くの種類がありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。主張そのものではなく主張している人物を攻撃する「対人論証(アド・ホミネム)」、相手の主張を自分が勝ちやすい内容にすり替える「藁人形論法(ストローマン)」、論争相手の注意をそらすために意図的に無関係な話題を持ち込む「燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング)」、多くの人がやっているからという理由でそれをすべきだと主張する「バンドワゴン効果(衆人に訴える論証)」、多くの選択肢がある複雑な状況を無理やり2つの選択肢だけに絞り込む「誤った二分法(フォルス・ジレンマ)」、ある行動をとれば必ず恐ろしい結果につながると主張する「滑りやすい坂論法(スリッパリー・スロープ)」、そして単一の事例を一般的現象の証拠として扱う「早まった一般化」などです。

論理的誤謬は本質的に人を欺く性質を持つため、特に事実に基づく論理的な主張の中に織り交ぜられていると、見抜くのが非常に困難です。さらに、追い詰められた瞬間には、負けを避けるためなら何でも使おうとして、自覚の有無にかかわらず、誰もが論理的誤謬に陥るリスクを抱えています。

共同で取り組んでいるプロジェクトにさらなる時間が必要かどうかについて、同僚と議論している場面を想像してみてください。あなたは締め切りの延長がプロジェクトのためになると考えているのに対し、同僚はすべて順調に進んでいるため延長は不要だと考えているとします。

あなたが「進捗が遅れていると思うので、締め切りの延長を申請して関係者の期待値を再設定すべきです」と言ったとします。すると同僚は次のように返答しました。「君は遅れそうになるといつもパニックになるよね。それに前回延長した時だって、結局必要なかったじゃないか。毎回延長を求めてばかりいたら、周りから仕事をしていないか、仕事の進め方を知らないかのどちらかだと思われるよ。他の誰も延長なんて求めていないんだから、仕事の量について不満を言うのはやめて、とにかく自分の仕事を終わらせることに集中してよ」

この例では、同僚はあなたが間違っていることを証明しようとして、いくつもの論理的誤謬を連発しています。

まず同僚は、「君は遅れそうになるといつもパニックになるよね」と言って対人論証から始めています。これは、追加の時間が必要かという問題そのものには一切触れず、プロジェクトが遅れているかどうかを判断するあなたの信ぴょう性を攻撃しています。

次に、「前回延長した時だって、結局必要なかったじゃないか」という発言は、早まった一般化とみなすことができます。前回延長が必要なかったという一事例だけをもって、今後も延長は一切不要であるかのようにほのめかしているからです。

続いて、「毎回延長を求めてばかりいたら、周りから仕事をしていないか、仕事の進め方を知らないかのどちらかだと思われるよ」と続きます。これは、延長を求めることが必然的に悲惨な結果を招くと主張する「滑りやすい坂論法」であると同時に、追加の時間を求める理由は多岐にわたるにもかかわらず、周囲の下す結論を2つだけに絞り込んでいる「誤った二分法」でもあります。

さらに、「他の誰も延長なんて求めていない」というのはバンドワゴン効果(衆人に訴える論証)です。たとえそれが事実であったとしても、他の誰も延長を求めていないからといって、あなたが延長を求めるべきではないということにはならないからです。

次に、「仕事の量について不満を言うのはやめて」という発言は藁人形論法です。もしあなたが反対の立場をとった場合、仕事量への不満を言うべきだと主張しなければならなくなるため、同僚にとっては容易に論破できる主張です。しかし、そもそもあなたは仕事量に対する不満など一言も口にしていません。

最後に、「とにかく自分の仕事を終わらせることに集中してよ」という発言は、燻製ニシンの虚偽(論点ずらし)と考えられます。あなたの集中度の度合いは、進捗が遅れており締め切り延長を求めるという問題とは何の関係もないからです。

健全なディベートを行うための鍵は、極めてシンプルです。自らは論理的誤謬を使わないこと、そして同僚が誤謬を用いた際には、可能な限り直接的かつ建設的に、アサーティブに制止することです。

例えば、同僚が「君は遅れそうになるといつもパニックになるよね」と言った場合、次のように返すことができます。「少し話を止めさせてください。今議論すべき問題は、業務の進捗が遅れているという点です。やるべきタスクがまだ何一つ完了しておらず、締め切りが明日の朝であるという事実に基づいています。締め切りを過ぎてから対応するのではなく、今すぐ期待値を再設定することを提案します」

あなたが間違っていると証明するために不誠実な手法を用いている同僚の発言をアサーティブに遮ることは、非常に居心地が悪く感じられるかもしれません。しかし、健全なディベートを促すコミュニケーション文化を維持するためには不可欠です。時が経つにつれて同僚たちは、あなたが事実に基づく論理的な主張で構成され、論理的誤謬のない議論であれば、いつでも歓迎する人物であると理解するようになるはずです。

2件のガイドに収録