不快感
喜び、悲しみ、怒りの非言語シグナルは、意識して観察し始めれば比較的容易に気づくことができます。しかし、不快感を見極めるのははるかに困難です。その原因を特定することが難しいためです。
把握できるのは「相手が不快感を覚えている」という事実だけであり、その理由までは必ずしも分かりません。緊張しているのかもしれませんし、次の予定に遅れそうなのか、あるいは単にトイレに行きたいだけなのかもしれません。
不快感を示す非言語シグナルは、脳の大脳辺縁系が脅威を察知した際に引き起こす「フリーズ(硬直)」や「フライト(逃走)」の反応に起因することが大半です。面接室のように不慣れな環境に置かれると、捕食者から身を隠そうとするかのように身体が硬直することがあります。また、答えに窮する難しい質問を投げかけられると、身体は逃走の態勢に入り、血流にアドレナリンを送り込みます。その結果、発汗、手の震え、貧乏ゆすり、呼吸の乱れや浅速化が生じます。
身体的な不快感と感情的な不快感のサインは酷似しているため、相手の非言語シグナルを正確に解釈するには、まず身体的な原因を排除する必要があります。
発汗が見られる場合、それは「フライト(逃走)」や「ファイト(闘争)」反応によるものかもしれませんが、単に室温が高すぎるだけかもしれません。
腕組みをしている場合、無意識に胴体を攻撃から守ろうとしているのかもしれませんが、単に部屋が寒すぎるだけかもしれません。
手が震えていたり貧乏ゆすりをしていたりする場合、逃走の準備をしているとも考えられますが、単にカフェインを大量に摂取した直後である可能性もあります。
非言語シグナルのみに基づいて、なぜ相手が不快そうにしているのか拙速に結論を下す前に、身体的不快感と感情的不快感を混同していないか確認するための質問を投げかけるのが賢明です。
人は感情的な居心地の悪さを覚えると、自らを落ち着かせようとする傾向があります。手を視界から隠したり、視界にある場合は指を組んで両手をこすり合わせたりします。腹の前で腕を組み、手のひらに肘を乗せることもあります。失言を恐れているかのように唇を覆い隠したり、あふれ出そうな涙をこらえるかのように目を触ったり過剰に瞬きをしたりすることもあります。喉元への攻撃を恐れるかのように首に触れる場合もあります。スプリンターがスタートを切る準備をするかのように椅子の下に足を引き込んだり、立っている場合はいつでも逃げ出せるように足を組まず、障害物のない安定した体勢を整えたりします。
身体的な原因が排除されているとすれば、これらの非言語シグナル(特に複数が同時に発生している場合)は相手が不快感を抱いている証拠となりますが、その「理由」までは教えてくれません。
採用面接や人事評価の場であれば、不快感の要因はおそらく緊張、ストレス、恐れです。相手の生計やキャリアがかかっている可能性があるからです。勤続年数の長い社員のように長期間面接を受ける側になっていない面接官や、自分自身は評価されず部下の評価しか行わない管理職は、面接や人事評価がどれほど強いストレスをもたらすかに対して鈍感になっている場合があります。
実のところ、多くの人にとって面接や評価面談は人生で最も強いストレスを感じる瞬間のひとつです。今後採用する人材や既存の社員から最も正確な情報を引き出すことが目的であるならば、質問やフィードバックという極めてストレスの多いプロセスに入る前に、まず相手を落ち着かせるためのあらゆる配慮を尽くさなければなりません。
人によっては、どんなに些細なものであっても否定的なフィードバックがあると肯定的なフィードバックを一切受け入れられなくなる点に留意する必要があります。99%が肯定的であっても、残りの1%が否定的であれば、その99%が完全に無視されてしまうことがあるのです。
相手に感情的な不快感が認められる場合、試みるべき対処法がいくつかあります。
部屋に座ってもらう際は、ドアの近くに座らせ、出口への動線を遮らないようにしてください。人は複数の人に退路を塞がれている状態よりも、すぐ退出できる位置にいるときのほうが安心感を覚えます。
相手を凝視し続けるのではなく、会話に関心を持っていることを示すアイコンタクトと、見つめすぎによる緊張を和らげるために視線を外すこととのバランスを取ってください。
肩や腰を相手の正面に完全に向けた状態で真正面に座るのではなく、身体の角度を少し斜めに開き、相手に飛びかからんとするかのように足を踏ん張るのではなく、足元をリラックスさせて組むとよいでしょう。
手は常に相手から見える位置に出しておいてください。人間は相手の手が見えていると安心し、見えないと不安を感じるためです。
パーソナルスペースを侵害されると人は極度の緊張を覚えるため、十分な距離(必要と思われる以上のスペース)を保ち、遠すぎると感じた場合は相手の側から近づけるようにしてください。
話しかける際は、普段よりもトーンを落とし、ゆっくりとした口調を意識してください。甲高い声や早口は相手を過敏にさせ、警戒心を強めます。
ストレスのかかる会話になることが分かっている場合は、仕事とは無関係の明るく前向きな話題を振って緊張をほぐし、相手の身体から力が抜けるかどうか観察してみてください。
極度の緊張状態にある人は、落ち着きを取り戻すまでに30分以上かかることもあるという点を忘れてはなりません。忍耐強くあることが不可欠です。相手がストレスを感じていればいるほど、居心地の良さを感じてもらうには多くの時間が必要になります。